2017/12/08 17:43

今年もあとひと月となりました。
寒くなりましたが、風邪など召されてはいませんか?
sunaoは今日も元気にコツコツ頑張っています。

先週から今週にかけては、ずっと古いスーツケースを修理していました。

スーツケース外装の素材はバルカナイズドファイバー。
原料のパルプや綿を特殊加工した素材で、見た目は厚紙に似ています。
グローブトロッターに使われていることで有名な素材です。

内装素材は白地にペンシルストライプのコットンですが、
かなり経年の汚れとシミが目立ちました。
そこでまずは、内装を全て取り外しました。


内装を取り外すと、こんな感じ。
バルカナイズドファイバーの傷みの目立つ部分は、内側から和紙を裏張りして補強します。


ちなみに、こちらが取り外した内装の布です。
赤茶色のシミはカビではなく、
接着剤が経年で劣化変色したことが原因です。
海外生産のバッグでは割とよくある問題のようで、
古いシャネルのキャンバス地のバッグでも、
同様の状態のシミを見たことがあります。




張り替える内装はイメージを一新して、
スペイン製の渋い紫のジャカードを選びました。

以前よりも少し厚めのウレタンをクッション材として仕込み、
芯材もそれに合わせて、サイズを調整していきます。


こちらが内装を貼り終わったところ。
柄合わせも予定通りうまくいきました。


内装の余り布でポーチも作ってみました。
スーツケースのサイズに合わせたので、
ぴったりきれいに収まります。


外側の小傷や汚れはバルカナイズドファイバーの経年の味わいでもあるので、
若干調色した塗料で目立たなくなるよう補正はしましたが、
塗装は最小限にとどめました。
傷や汚れを隠しても、本来の風合いを変えてしまっては本末転倒だと思っています。
いわば絵画修復のように、細心の注意を払って作業を進めます。


柿渋を塗ったコットンでスーツケースカバーも作りました。
独特のツヤが美しい柿渋布は防水防汚の効果もありますし、
経年の味わいも存分に楽しめる日本の伝統布。
ラミネートみたいに劣化せず、アイロンもかけられます。

バルカナイズドファイバーは比較的小キズや汚れがつきやすい素材ですが、
こんなカバーがあれば、飛行機に乗るときも安心して荷物を預けられますね。


最近はバッグ制作の仕事がほとんどですが、
実は修理もとてもクリエイティブな作業です。

sunaoのバッグはすべて修理のご相談をお受けしていますし、
他社のものでも技術的に可能なものはお受けしています。
必要な折にはお声がけください(^o^)/